妊娠高血圧症候群:HDP(妊娠中毒症)について
妊娠高血圧症候群:HDP(妊娠中毒症)は、妊娠中期から後期にかけておこる病気で、主な症状として「高血圧」があります。現在では、妊娠中毒症は『妊娠高血圧症候群(HDP)』と名前が変わり、「妊娠20週以降から出産後12週まで高血圧、または高血圧にたんぱく尿を伴う場合」と定義づけられています。妊娠中毒症はママさんだけでなく、赤ちゃんの発育にも影響がある病気です。今回は、そんな妊娠高血圧症候群:HDP(妊娠中毒症)について解説します。
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妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の診断
妊娠高血圧症候群は、以前、妊娠中毒症と呼ばれていた頃、三大症状(高血圧、蛋白尿、むくみ)として「むくみ(浮腫)」がありました。しかし、むくみは約3割以上の妊婦さんに認められ、母体にむくみが現われても多くの場合は、胎児への影響はないとされています。よって、むくみは妊娠高血圧症候群の診断基準から除外となり、妊娠高血圧症候群の診断基準が、以下の通りに変更となりました。
- 蛋白尿やむくみを認められるものの、高血圧でない場合は妊娠高血圧症候群ではない
- 妊娠20週以降に血圧が上昇し、分娩後に血圧が正常値となる場合は妊娠高血圧症候群とする
- 軽症:収縮期血圧(最高血圧)140mmHg以上/拡張期血圧(最低血圧)90mmHg以上
- 重症:収縮期血圧(最高血圧)160mmHg以上/拡張期血圧(最低血圧)110mmHg以上
- 高血圧と蛋白尿が認められる場合は、妊娠高血圧腎症に分類される
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の症状
自覚症状としては、いわゆる高血圧の症状が一般的です。 ズキズキとした激しい頭痛、目のかすみ、つわりなどと区別が難しいですが、吐き気や嘔吐を感じることもあります。
妊娠以前より高血圧や糖尿病、肝臓・腎臓に持病があるママさんは妊娠高血圧症候群のリスクが高まるとされています。また肥満や高齢・多胎妊娠(双子など)、初産婦のほか、血縁者の中に高血圧や糖尿病を認められる方がいる場合もリスクが上がる恐れがあるとされています。
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の原因
妊娠中毒症の原因は、まだ完全に解明されていません。しかし、胎盤の異常が大きく関わっていると考えられています。胎盤の異常とは、胎児が子宮壁に深く着床せず、十分な血液供給が受けられない場合や、胎児への栄養供給が妨げられていたり、胎盤から血圧を上げる物質や、血管を収縮させる物質が過剰に分泌される場合などがあります。遺伝的な要因としては、 家族に妊娠中毒症の既往がある場合にリスクが高まる可能性があります。
ほかにも、
- 初めて妊娠する場合(初産)
- 35歳以上の高齢妊娠
- 肥満
- 妊娠前からの高血圧
- 糖尿病
- 多胎妊娠(双子や三つ子を妊娠している場合)
などが妊娠高血圧症候群発症に関係しているとされています。妊娠高血圧症候群は、様々な要因が複雑に絡み合って起こる病気であり、一概に特定の要因を挙げることは難しいのが現状です。また、個々の妊婦さんの体質や生活習慣も影響するため、原因解明にはさらなる研究が必要だとされています。
妊娠高血圧症候群妊娠中毒症のリスク
妊娠中毒症は、母体には、
- けいれん
- 血小板減少
- 肺水腫
- 急性腎不全
- 肝炎
- 脳内出血
など、のリスクがあります。
胎児には、
- 胎児の成長遅延
- 早産
- 胎児死亡
など、発育に影響を及ぼす可能性があります。
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の予防と対策
妊娠中毒症は、母子ともにかかってしまう病気ですが、早期発見と以下のような適切な対応によって重症化を防ぐことができます。
産婦人科を定期的に受診する
対策としては、定期的な産婦人科検診を受けることが最も重要です。自分では判断が難しい病気のため、専門家に定期的に診てもらうことが必須です。ほかにできることとしては、血圧測定をこまめに行うことで高血圧の早期発見に繋がります。また、体重測定をこまめに行い、急激な体重増加は、妊娠高血圧症候群のサインとなる場合があります。
健康的な生活
バランスの取れた食事も大切です。ジャンクフードや塩分を控え、カリウムを多く含む食品を積極的に摂りましょう。適度な運動を心がけ、ウォーキングなどの軽い運動は血圧を安定させる効果が期待できます。睡眠も大切で、睡眠不足は高血圧のリスクを高める可能性があります。できるだけリラックスできる時間を作り、ストレスを溜めないようにすることも忘れないでくださいね。
リスク要因の管理
高血圧が妊娠前からある場合は、医師の指示に従って治療を行うことが大切です。糖尿病など、糖代謝の異常がある場合は、血糖値をコントロールすることが大切です。肥満もリスク因子となるため、できるだけ妊娠前に体重を減らす工夫が必要な場合があります。高齢妊娠の場合は、より注意深く経過を観察する必要があるため、こまめに産婦人科を受診しながら経過観察をしてもらいましょう。
早期発見・早期治療
血圧が高い、頭痛、視力障害、腹痛、吐き気など、少しでも気になる症状があれば、すぐに医師に相談しましょう。
まとめ
妊娠中毒症は、自覚症状がないまま進行することがあります。過剰に心配する必要はありませんが、少しでも気になる症状がある場合は、すぐに産婦人科の医師に相談することが大切です。妊婦健診で初めて分かることも多いため、予定通りに妊婦健診を受けるよう心がけましょう。また、ストレスを溜めない範囲で食事や運動、体調管理、メンタルケアなど生活習慣を見直し、血圧を安定させることが大切になります。