「産後うつ」とは?症状や対策・予防法について

産後うつとは?対策と予防法

出産はライフイベントの一つですが、身体的・精神的に大きなストレスも伴います。産後うつは、ライフイベントを迎えている家族に起きることがあります。この記事では特に女性の産後うつについての原因、症状、対処法、そして産後うつを予防するためのヒントを解説しています。

産後うつとは?

産後うつ とは?

産後うつは、出産後に起こる気分の落ち込みや不安、イライラといった症状を総称したものです。産後3か月以内に発症することが多く、マタニティブルーズが通常は1〜2週間でおさまるのに対し、産後うつの症状は2週間以上持続します。マタニティブルーズがあった女性は産後うつ病発症のリスクが高まるともいわれています。

発症の背景要因として、うつ病の既往の他、パートナーからのサポート不足など育児環境要因による影響も大きいとされています。妊娠中から不安やうつの問題がおこっている場合も少なくないため、妊娠中からケアを行う必要があります。

妊産婦のうつ傾向については、「健やか親子21(母子保健の国民運動計画)」によると、エジンバラ産後うつ指標を用いて評価した全国の「産後うつ」の割合は2013年度が8.4%、2017年度が9.8%、2021年度が9.7%で、約1割の方が産後うつで悩んでいることが統計からも分かります。

産後うつの原因

産後うつの原因は、まだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が考えられます。

肉体的ストレス

頻回授乳による睡眠不足や姿勢不良、出産後の身体回復の過程であること、急激なホルモンバランスの変化などによる肉体的ストレスに起因します。特に産後は、ホルモンバランスの急激な変化によりストレスに耐える脳の働きが低下しているため、物事を悪い方向に考えてしまいがちです。その結果、「親なら、やらなければならない」とひとりで抱え込むなどの悪循環に陥ってしまうこともあります。

精神的ストレス

慣れない育児へのプレッシャーやライフスタイルの変化、家族関係の変化などにより、産後は精神的にもストレスにさらされやすい環境にあります。さらに、産後は家にいる時間が必然的に増えるため、孤独感を感じやすく、赤ちゃんのお世話は予測困難な出来事の連続です。産後はどうしても赤ちゃん優先の生活となるため、自分自身のことを後回しにしてしまいがちになります。そういったこともストレスを感じる要因となり、産後うつのリスクが高まる可能性があります。

周囲のサポート不足

産後は、赤ちゃんのことだけではなく、家事や各種健診、ワクチンスケジュールなど、慣れないタスクを多く管理・遂行しなければならないことがたくさんあります。慣れない育児に疲れた心と身体でタスクを抱え込んでしまうと、産後うつのリスクが高まる可能性があります。

妊娠中または過去のうつ病経験

妊娠中や過去に鬱の経験があると産後うつのリスクが高まる可能性があるといわれています。

産後うつの症状

個人差はありますが、産後うつでは以下のような症状がみられます。

  • いつも憂鬱な気分で、何もやる気が起きない。
  • 将来に対する不安や、赤ちゃんに対する不安を感じる。
  • 小さなことでイライラしたり、怒りっぽくなったりする
  • 物事に集中できず、ミスが増える
  • 夜眠れなかったり、異常な眠気に襲われる
  • 食欲不振や食べすぎる
  • 頭痛、肩こり、倦怠感など
  • 赤ちゃんを可愛いと思えない
  • 赤ちゃんのお世話がおっくうに感じる
  • 自分の子育てに自信を持てない
  • 親失格だと思ってしまう

こうした気分の落ち込みが2週間以上続いている場合は、産後うつが疑われます。症状がひどくなると、自分を傷つけようと考えてしまうことも。産後に上記のような症状がある場合は速やかに医療機関を受診することをおすすめします。

産後うつを予防するためにできること

産後うつは、完全に予防することは難しいですが、以下のような対策をとることで発症のリスクを下げることができます。あくまで理想なので、完全でなくても、一部だけ取り入れるだけでも十分です。

産前から心の準備をしておく

妊娠中に、産後の生活について事前にイメージトレーニングをしておくと、心の準備ができます。産前からの準備として、妊娠中からつらいなと感じたら、一人で悩まずに周りの人や主治医にもご相談ください。

周囲に助けを求める

産後に「つらい」「苦しい」と思ったら、まず周囲に助けを求めることが大切です。「母親なんだから当たり前」「みんな出来ているはず」などと自分を追い込むと、産後うつに陥るリスクが高くなります。周りにはあなたのことをサポートしたい人がたくさんいることを忘れないでください。パパさんや両親、友人などに、できるだけ育児や家事を手伝ってもらうようにしましょう。

子育ては人生の中で限られた時間にのみ存在する、貴重な時間です。「育児を手伝ってもらう」という意識ではなく、「ライフイベントのなかで貴重な育児の経験をシェア」するんだ、と思って協力を要請してみるのも良いかもしれません。

周囲とのコミュニケーション

女性は1日に6000語以下しか話せないと脳がストレスを感じやすくなるといわれています。一方、20,000語以上のおしゃべりはストレス解消にもつながっているそうです。

サロンドマーリッシュでは、施術スタッフに守秘義務がございますので、どんなお話もスタッフとお客様との大事なお話として胸にとめます。

「いま、どうしても話したい!」と思う時は、パパさんに「オウム返しを心がける」ように心がけて会話してもらうことがおすすめです。男性はついついアドバイスをしてしまいがちですが、女性は会話の中で共感を求めていることが多いのです。パパさんが「そう感じたんだね」「不安なんだね」とオウム返しをしてくれるだけで気持ちがスッキリすることもあります。

肉体的ストレスがあれば身体のケアを受ける

頭痛、肩こり、腰痛、倦怠感などがあれば、マッサージや産後骨盤矯正など受け、身体のケアをするのもおすすめです。

規則正しい生活

意識で不安や焦燥感、イライラなどの感情を抑えることは難しいですが、規則正しい生活をしていて体調が良いと、無意識のレベルでネガティブな感情が起こりにくくなります。睡眠をしっかりと取り、バランスの取れた食事を心がけましょう。

軽い運動

産後の体力回復のために、軽い運動を取り入れることも効果的です。新たに時間を作って運動をするとなると負担が大きいので、料理の合間にスクワットをしたり、日頃行っている散歩の際に少し遠くまで足を伸ばしてみるだけでも十分です。

他のママとの交流

同じような悩みを持つママたちと交流することで、孤独感を解消し、情報交換をすることができます。悩みが自分だけのものではないことを知ることで、安心感が生まれます。

自分でできる産後うつ対策

自分で出来る産後うつ対策 

産後うつには自分でできる対策もあります。しかし、「頑張らないと!」と過剰に自分を律しようとすると、逆効果になります。常に自分と相談しながら、以下のことを意識してみてくださいね。

規則正しい生活

睡眠時間を確保し、バランスの取れた食事を心がけましょう。適度な運動、ウォーキングや筋トレは、幸せホルモンや、やる気ホルモンを分泌させ、心身の健康維持に役立ちます。また、夜にぐっすり眠り、朝に日光を浴びることで自律神経が整い、不安感や焦燥感が減少します。自然に触れることもストレス解消効果が高いことが分かっています。緑の多い近所の公園をチェックしておき、時間ができたら散歩してみるだけで、気持ちが軽くなるのが実感できると思います。

リフレッシュ

好きなことをしてリラックスしたり、自然の中に出てみたりするなど、気分転換になることをしましょう。また、産後ヨガで体を優しく動かしながら、心身のリラックスを促すこともできます。アロマセラピーもおすすめで、嗅覚への心地よい刺激は原始的な本能の部分からリラックスさせる効果があります。また、家事についても完璧を求めず、「後回しでいいか」、「簡単に済ませてしまおう」など、気持ちにゆとりを持って過ごすと、身体も心も楽になります。

育児のサポートを受ける

パートナーや家族に協力してもらい、育児の負担を軽減しましょう。家事や育児を分担することで、自分の時間を作ることができます。育児をサポートするサービスを利用したり、行政に育児の相談をすることもできます。他人に自分の子供をみてもらうことを心配される方が多いですが、子供は大人の想像以上に適応能力が高く、たくましいものです。思い切って任せてみることで心の余裕ができることもよくあります。

産後うつかな?と思ったらまず相談

産後うつになってしまった場合は、決して一人で抱え込まず、専門家などに相談することが大切です。当院はもちろんのこと、産婦人科、小児科、精神科など、様々な科で相談に乗ってもらうことができます。気軽に話を聞いてみて、全てを実行する必要はないので、できる範囲で取り入れてみることから始めてみるのはいかがでしょうか。

まとめ

慣れない育児に奮闘して身も心も疲れ切っている中、自分ひとりで頑張ろうとすると、自覚のないまま産後うつに陥ってしまう恐れがあります。気分が落ち込む、突然涙が出てくる、食欲が湧かない、眠れないといった症状が現れ、2週間経っても改善されない場合は、専門機関に相談してみましょう。